「仁?」
「和佳菜は千夏のこと守ろうとするし、千夏もまた然りだし。なんだよ、お前ら。相思相愛かよ。俺も混ぜろよ」
「なに、言っているの?」
貴方はなんだか不敵に笑っていて。
どうしてこの状況で余裕のある顔ができるの?
「やっぱり二人の前で決めることにして良かった」
「…どういうこと?」
「二人で話そうとしたんだがな。上手く進まんくてなあ。やけん、もうこっちで決めようと、そういうこと」
葏忢さんは、笑う。
余裕が漂うその顔から、ああ、仁が追い詰められているのだ、そう感じ取った。
「仁は二つの選択を迫られとる。お前らふたりを青山の下で働かせる代わりに、仁は銀深会にいるか。お前らを自由にする代わりに、仁がうちに来るか」
いちいちわかりやすいのにまたイラつく。
千夏ちゃんはこれを知って、せめて自分だけでもと思ったのだろうな。
「…覚悟は決めたか?」
「決めました」
「じゃあ」
「最初に言っておきます。俺は青山に行くつもりはありません」
「なら」
「でも俺はやっぱり2人も救う」
片方しか選ぶことが出来ないとしても。
貴方は両方を選ぶって言うのね。
叶うって、どんなに信じられなくても。
貴方が放った言葉なら。
あたしは信じていられるの、不思議ね。
「…無謀やな。言ったやろ?お前が選べるんは、ひとつだけやって」
「聞いてません。聞いてたとしても、そんなのあり得ない」
「…交渉決裂や」
それはまるで戦いを挑むかのよう。
「手加減すなよ」
戦いの火蓋は静かに切られた。



