鼻がツンとして、痛くて。
苦しくて、息が出来ない。
頬に伝う暖かいモノにあたしは何度目だろうと自身に呆れながら。
これもいいかと、頬を擦った。
「和佳菜ちゃん。ありがとうね」
あたしの肩を抱いて、再度繰り返す彼女に、泣いても泣いてもきっと足りない。
「なんでそんなに優しいの…」
心臓を柔らかく掴まれたかのように、あたしの心を捉えてきて。
あたしの欲しい言葉ばかりくれちゃって。
ほんと、何なの。
「だって和佳菜ちゃんが優しいから」
「優しくなんてした覚えない」
「ええ?ヤダ、やめて?そんなこと言わないでよ。あたしにとってはあの部屋の思い出はどれも優しさでいっぱいだったんだから」
「…うそ」
「嘘じゃないわよ。あたしほんとに貴女と会って良かったって思った。だから、ね」
あたしを離して、目を見て。
「あたしに向き合う勇気をくれてありがとう。だから、あたしの言葉でちゃんと向き合うね」
「あたしの言葉?」
なんだろう、嫌な予感がする。
ぎゅっと眉を寄せた時、襖が開いた音がした。
その人を見て、千夏ちゃんが柔らかく笑った。
「…おかえり。ほら、和佳菜ちゃん。王子様が来たよ」
王子様?
訳の分からない言葉に振り返ると。
「仁…」
「和佳菜」
やっぱりほんとうにわからないの。
「なんで、ここにいるの?」
「そりゃ」
「俺と決着をつけるためや」
遮るように後ろから出てきた男がそう言った。



