蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



遮られた声に思わず足が止まりそうになる。


綾に強く引っ張られているから、止まるにも止まることなどできないのだけど。


「仁が?」


何故その名前が?


貴方はここにはいないはずでしょう?


「…どうして」


「知らねえ。さっきの電話で仁に呼ばれた。和佳菜も来いって」


「さっきの電話。相手は…」


「仁だ」


有無を言わせない声音。


どうしようもなく、怖くなった。


千夏ちゃんには何も言っていない。


これはあたしのエゴであり、勝手にしたことだから。


全て終わった後にいくらでも罵られてやろう。


そんな風に思っていたのに。


下っ端君が慌ててタクシー会社に連絡している。


そんな光景をぼやっと眺めるくらい。



あたしの頭は回っていない。