遮られた声に思わず足が止まりそうになる。
綾に強く引っ張られているから、止まるにも止まることなどできないのだけど。
「仁が?」
何故その名前が?
貴方はここにはいないはずでしょう?
「…どうして」
「知らねえ。さっきの電話で仁に呼ばれた。和佳菜も来いって」
「さっきの電話。相手は…」
「仁だ」
有無を言わせない声音。
どうしようもなく、怖くなった。
千夏ちゃんには何も言っていない。
これはあたしのエゴであり、勝手にしたことだから。
全て終わった後にいくらでも罵られてやろう。
そんな風に思っていたのに。
下っ端君が慌ててタクシー会社に連絡している。
そんな光景をぼやっと眺めるくらい。
あたしの頭は回っていない。



