「俺だ」
そう呟いた綾が電話を片手に話をし始める。
「…っは?」
そう言ってから、携帯電話で何やらゴニョゴニョと話し込み始めた。
電話の相手は知らないが、あたしにはそれが気にするより、やることが沢山ある。
「じゃあ、志田。これから帰る?」
「え、帰らせてくれんの?なら、帰るわ」
「そうねえ。銀深会の関西支部に行ってみたいわ。連れて行ってくれる?」
「何言ってんだよ。無理に決まってるだろ。よそもん連れて行くわけにはいかないっつーの」
「そう。残念。なら、代わりにひとつ、教えて欲しいことがあるの」
「な、なんだよ」
「一年前、あたしと仁を追い回したあの銀のバイク。あれ、どうやって手に入れた?」
「…っ、お、覚えてねえよ!」
明らかに怯える志田にもう笑うしかない。
「嘘つき。その青ざめた顔で言わないでくらる?」
「…あ、あれは!お前とやり合うなら、これを使えって、真田さんが!」
「本当?」
「嘘言わねえよ!ただ!」
「ただ?」
「あの時の真田さん、目がイっちゃってて怖かったから…それだけだよ!」
真田…か。
あったことはないけども、その感じだとあたしに良い感情を抱いていないようだ。
「その真田は今どこに?」
「解散するまえに卒業してったから、わかんね。南さんとかの方が知ってるんじゃねえの?」
「南と喋るより貴方の方がずっと楽」
「おい、楽でえらぶなよ」
「和佳菜」
硬い声に呼ばれて振り返ると。
「どうしたの?真剣な顔をして」
「急ぐぞ」
あたしの手を引いて歩きだす。
歩幅は広く、ついて行くのに精一杯。
「な、何を言っているの?どうしたの?」
「…いそげ」
「だから、何が」
「仁が千夏と青山に来てる」



