蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「ありがとうございます」


ほっと息をついた佐々木さんに笑顔を返した。



「ねえ、弟さんの名前、藍士・ダフィズ・佐々木、そう言ったわよね?」


あたし、何か重要なことを見落としているような…。



「あ、佐々木さん!佐々木さんの名前ってなんですか?」


「佐々木慎之助、ですけど」


「佐々木さんはハーフじゃないの?」


そうだ、これがずっと謎だったのだ。


弟のことを異母兄弟と言っていた佐々木さん。


異母というと、その心は。


「違いますよ」


「え、違うの?」


「ご存知かは分かりませんが、アメリカで生まれるだけでアメリカの国籍がもらえるんです。だから、わたくしは二重国籍者だったんです」


「じゃあ弟さんは…」


「わたくしは両親ともに日本人でしたが、弟は母親がイギリスのウェールズ系だったと思います。わたくしの母は若い頃に事故で死に、再婚した人、つまり弟の母親に育てて貰いました」


その後弟の母親は父親と離婚し、人権は働かずに自堕落な生活を送っていた父親には渡らず、彼の義母に人権が渡ったという。


「大切に育ててもらったと思ってますよ。だから、わたくしも母と呼べるんです」


佐々木さんにとって、どちらも変わらずに母親なのだ。


そこにはきっと憎しみとか、悲しみとかは無く、ただ純粋な感謝しかないのだろう。



その時。


コンコン、とノックが聞こえた。