だけど、分からない。
「わたくしにもつてがないわけではありません。信用できる人間など多くは居ませんが、多くの人の話を聞けばことの外形くらいは掴めます。そこで辿り着いたのが貴女がsugarで一緒にいた男です」
そうは言われても、sugarで一緒にいたことさえ思い出してはいないあたしが、知っていることなどないに等しい。
名を聞いても思い当たる節はなかった。
「その男が、弟さんに近いって?」
「はい。そいつの名もなにも分かりません。だから、スティーブン家に潜入することで、情報を得ようとしていました。手先が器用でしたので、庭師として。様々な伝手を使って、潜り込みました」
「そこからどうしてその男があたしと話していたsugarの人だって思ったの?」
「わたくしもあの家に居れば、大体の人の顔は覚えます。元々記憶力は良いので、出入りした人の顔は頭に入っています。ただ、その男だけ、一向に顔を見せないんです」
「顔を見せない、とは?」
「sugarはただの白いベールで囲われた場所なので、話をしている声は筒抜けです。だから、貴女が誰かと話している声は、聴こえる。ただ、その人は周囲に誰も人がいない時のみ、外に出て行くようなのです。1日の大抵をそこで過ごし、人がいなくなるタイミングでしか、出ていかない」
丸聞こえだったのか、あたしsugarで誰にも言えないような話をしていたのだけど。
恥ずかしいことをしていたと自覚したあたしは頭を抱えるしかなかった。
「和佳菜様?」
「え?あ、ごめんなさいね。少し、違うことを思い出していて」
「いえ、構いませんが、話を聞かないと、訳がわからなくなると思いまして」
「そうね。それで…ええと、その男はsugarでずっと過ごしているの?」
「いえ、あそこにはシャワーもトイレもないのでそれは難しいと思います」
「でも、あの庭は広いとはいえ、多くの人が住んでいるのよ。必ず誰かに見つかるわ」
「それでも見つからないのです。…そこで、一つお願いがあるんです」
「いいわよ」
「…まだ、なにも言っていませんが、伝わりましたか?」
驚いた顔にあたしは笑うしかなかった。
だってその先はわかっているから。
「伝わってるわよ。弟さんを探すんでしょう?いいわ、探しましょう」



