「日本に来てから弟とは全くあっていなかったんです。だけど、ふとどうしているのか気になって。一度アメリカに渡りました。ですが」
「会えなかったの?」
「はい。それどころか、もうこの刑務所には居ないと釈放されたと聞きました。普通だったら、近親者に釈放されるときに通知が来たり、迎えに来いと連絡が入るのです」
それはもっともな話だ。
身元引き受け人が居なければ、釈放などできない。
「近親者はわたくし以外におりませんので、わたくし以外にそれが入る人はいないはずです。ですがそのような類いのものは全く」
「じゃあ、どうやって」
「そこから既に分からないのです。その時はわたくしは弟はもうわたくしには会いたくないのだと悟り、こちらからもなにもしませんでした」
しかしと彼は続けた。
「わたくしにもいろいろありまして、この世界に入ることになってしまいました。その時に、いろいろな人物から、弟の名を聞いたのです。…あいつには従わなきゃいけない。じゃないと、殺される、と」
殺される…?
「それって一体…」
「どうやらこの世界では名の知れた、殺し屋になっていたようです。専属というよりは、主人を転々としていたことの方が多いらしく、わたくしが探し当てた頃はそれが」
「誰、だったの?」
「スティーブン家、でした」
揺るるかに笑った。
その目は悲しげで。
だけど、全て繋がる。
絡まって解けなかったはずの糸が、はらりと一本になった。
「あの、弟さんの名前って」
ここまで来ればきっと名前さえ聞けばわかるはず。
「藍士漢字・ダフィズ・佐々木」
「…そんな人、うちにいたかしら?」
「和佳菜様もご存知無いんですか?」
聞き覚えのない名前に首を捻る。
「ええ。ミドルネーム付いているけど、もしかして」
「お察しの通りだと思います。日本とイギリスのハーフと、日本人はよく言いますかね。わたくしはミドルネームありの名しか知りませんが」
「どちらを取ったかは。…18で決めるから、分からないわね」
「はい。外国に住む日本人なんて、とてもおおいとは思いますけど、藍士なんて名前はかなり珍しいので、すぐにあいつだと気づきました」



