かつかつ後ろをつける音に妙に敏感になる。
「一先ずは、ひとの多いところに出ましょう。身を隠しやすいですし、彼らも人気のあるところでは無闇矢鱈に行動は出来ませんからね」
あたしの腕を強く引く頼もしさに、少し安心した。
「いいわね。と言ってもここも結構人が多いのではないの?」
人通りがそれなりに多い街だ。
スーツを着た中年男性をちらほら見かける。
と言っても、怪しい様子も無く、仕事に疲れた、“普通の人”だ。
「ここら辺はまだ族の人間や裏で働く人間が多いんです。地元の人も多いですし」
「詳しいんですね」
「…昔はここら辺に住んでいたんですよ」
「え」
佐久間先生とも知り合いだし。
仁はいつだったか、世話になった人だとか言っていたし。
マークに心酔しているし。
おまけに大阪に住んでいた、という。
それもこの青山が一帯を支配する土地に。
「…佐々木さんって、何者なんですか?」
あたしは名前も知らないし。
銀深会の頭は何か言っていた気もするが、もう忘れたし、事実確認はしていないから分からないが正しい。
それを聞いていなくてプチパニックに陥ったことしか覚えていない。
「まあ、それはまた今度にしましょう。時間のある時に、ゆっくりと」
そう、なんとなく影のある笑みを浮かべた辺り、ああ、ここからはダメなのか。
なんて、見えない壁を叩いた気がした。
小さく残る喪失感に似たような、満たされない気持ちに。
さっきまで感じていた頼もしさは消え失せ。
「あたしはどんなことがあっても、佐々木さんの味方でいられる自信はあります」
そんなことを口にしていた。



