「俺らは、もうこんなことしよらん。…千夏には近づかん」
そうカメラに向かって宣言した組長は、ふうと息をついた。
そしてさっさと出てけ、と言って、暗闇に姿を晦ました。
その声を聞いた時、静かにタイマーが止まった。
同時に消えていた電気がつき。
「止まったぞ!」
そんな声に盛り上がる男達に紛れ、少年が姿を表す。
「…和佳菜さん」
「坊や。ごめんね、貴方の組に少し意地悪をしたわ」
「悪いと思っとんなら、やらんでくださいや」
むすっとした玲はそれでも仕方ない、とでもいう顔をしていた。
もしかして…こうなることを分かっていた?
「それもそうね」
「…また俺はあの人に会えないんか」
まさかね。
ため息をついた玲はまだ中学生。
そこまでよめるとは思えない。
「あの人?」
「ああ、和佳菜さんが考えとるアメリカのひとやないんすよ?あの人は…」
「千夏ちゃん?」
目を大きく見開いた玲は、それからふっと目を伏せた。
「分かっとるなら、合わせてくだせえよ」
ひとりごとを呟く彼にそっと微笑みを浮かべた。
「あの子の行動まで制限するつもりはないから、なんとも言えないけれども。だけど、あの子は貴方に会う日が来るわ」
「確信でもあるんすか?」
「ないけど…勘かしら」
「…あてにならんわ」
そうは言ったものの獰猛さは落ち着き、幾らか心の余裕があるように思える。
「貴方が何を考えているかあたしは知らない。だけど、良からぬことを考えていないことは分かる」
「…!」
「だから何も言わない。何もしない。…貴方達が無事にあたし達をここから出してくれるなら、貴方の今後のことは考えないでおく」
「…千夏さんを強引に連れ出そうとしたら?」
「あたしはあの子の意思を尊重する、それだけ」



