蒼の花と荒れる野獣Ⅱ




「俺らは、もうこんなことしよらん。…千夏には近づかん」


そうカメラに向かって宣言した組長は、ふうと息をついた。


そしてさっさと出てけ、と言って、暗闇に姿を晦ました。



その声を聞いた時、静かにタイマーが止まった。


同時に消えていた電気がつき。


「止まったぞ!」


そんな声に盛り上がる男達に紛れ、少年が姿を表す。


「…和佳菜さん」


「坊や。ごめんね、貴方の組に少し意地悪をしたわ」


「悪いと思っとんなら、やらんでくださいや」


むすっとした玲はそれでも仕方ない、とでもいう顔をしていた。


もしかして…こうなることを分かっていた?


「それもそうね」


「…また俺はあの人に会えないんか」


まさかね。


ため息をついた玲はまだ中学生。


そこまでよめるとは思えない。


「あの人?」


「ああ、和佳菜さんが考えとるアメリカのひとやないんすよ?あの人は…」


「千夏ちゃん?」


目を大きく見開いた玲は、それからふっと目を伏せた。


「分かっとるなら、合わせてくだせえよ」


ひとりごとを呟く彼にそっと微笑みを浮かべた。


「あの子の行動まで制限するつもりはないから、なんとも言えないけれども。だけど、あの子は貴方に会う日が来るわ」


「確信でもあるんすか?」


「ないけど…勘かしら」


「…あてにならんわ」


そうは言ったものの獰猛さは落ち着き、幾らか心の余裕があるように思える。


「貴方が何を考えているかあたしは知らない。だけど、良からぬことを考えていないことは分かる」


「…!」


「だから何も言わない。何もしない。…貴方達が無事にあたし達をここから出してくれるなら、貴方の今後のことは考えないでおく」


「…千夏さんを強引に連れ出そうとしたら?」


「あたしはあの子の意思を尊重する、それだけ」