「あの」
覚えた道順のままに出口を目指していると、後ろから声を掛けて来た者がいた。
「…あら、さっきの男の子」
振り返れば、玲がひとりポツンと立っている。
「どうしたの?」
「すみません、立ち聞きしました」
そう断った瞬間に、なんのことかを理解した。
「どうしてそこまであいつに固執するのでしょうか?」
鋭い眼光に、思わず目を細める。
「固執、か。しているように見える?」
「かなり」
「あら、残念。検討はずれね。貴方の組の者が、あの面白い子を追ってるって聞いたから、楽しそうだと思っただけよ」
そう微笑んだ。
理由が知られていたとしても構わない。
あの子が面白い子であることも本当のことだから、全てが嘘ってわけでもない。
全てが本音とも言えないけれども。
「…貴女はそんな人じゃない」
俯いた玲に影が出来た。
「え?」
「和佳菜さんが理由もなしに行動を起こすなんて、そんなこと今までありませんでした。必ず理由がありました、だから!」
「…あたしのこと、知っているの?」
はっと、玲が口を押さえた。
演技か、否か。
あまりにわざとらしいので、疑うことしかできなくなる。
「い、や。…あの」
「どうしたの?」
様子がおかしいけれども。
彼は少し右往左往した後、ようやくくちびるを開いた。
「僕……和佳菜さんのファンなんです」



