蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「あの」


覚えた道順のままに出口を目指していると、後ろから声を掛けて来た者がいた。


「…あら、さっきの男の子」


振り返れば、玲がひとりポツンと立っている。


「どうしたの?」


「すみません、立ち聞きしました」


そう断った瞬間に、なんのことかを理解した。


「どうしてそこまであいつに固執するのでしょうか?」


鋭い眼光に、思わず目を細める。



「固執、か。しているように見える?」


「かなり」


「あら、残念。検討はずれね。貴方の組の者が、あの面白い子を追ってるって聞いたから、楽しそうだと思っただけよ」


そう微笑んだ。


理由が知られていたとしても構わない。


あの子が面白い子であることも本当のことだから、全てが嘘ってわけでもない。


全てが本音とも言えないけれども。



「…貴女はそんな人じゃない」


俯いた玲に影が出来た。


「え?」


「和佳菜さんが理由もなしに行動を起こすなんて、そんなこと今までありませんでした。必ず理由がありました、だから!」


「…あたしのこと、知っているの?」


はっと、玲が口を押さえた。


演技か、否か。


あまりにわざとらしいので、疑うことしかできなくなる。


「い、や。…あの」


「どうしたの?」


様子がおかしいけれども。



彼は少し右往左往した後、ようやくくちびるを開いた。



「僕……和佳菜さんのファンなんです」