蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「頭の良い子ね」


「私もそう思います」



玲って呼ばれた子。


今隣に立っている椎田と違って頭脳派のようだ。


頭を使って動くことができる人間は必ず強くなれる。


あたしはそう思っている。


現にマークも、仁も、力の強さだけではなく心の強さも兼ね備えている。


きっと彼もとても強くなるだろう。


敵にいるととても厄介なタイプだ。


「動くんじゃねえぞ」


「言われなくても動かないわよ」


椎田が睨みを効かせてもこんなのどうってことない。


椎田もあの子も、あたしの身分は知らないようだし。


寧ろ好都合だ。


あたしの顔は思ったよりも世間に知られていない。


「お待たせしました」


男の子が走ってくる。


「組長室までご案内します」


さっきと変わらない緊張感のない笑みをうかべてそう言った。


「会ってくれるのね」


「はい。とても大切なお客様と聞きました。アポさえ取ってくれれば、こんな真似をしなくてもよかったのに」


眉根を寄せて、笑った彼はどことなくまだ警戒している。


それはそうだろう。


得体の知れない人間を家に入れるなど、とても無用心だ。


「ごめんなさいね、急用だったから」


「以降お見えになる際は必ず事前に声かけて頂きたいです。今回のように失礼なことをしたくはないので」


「気をつけるわ」


ありがとうございます、と彼はとてもきれいな笑顔で言った。


綺麗すぎて寧ろ怖い。



「こちらが組長室になっています」



いくつかの角を曲がった、とても奥まったところに、それはあった。


この先、正直どうなるか分からない。


目の前を歩く彼も武術には長けているだろう。


護身術くらいなら出来るけれども、あくまでも護身術。


自分の身を守るくらいだ。


喧嘩は出来ない。


敵の出方によっては、口以外で勝負することになりそうだ。