「頭の良い子ね」
「私もそう思います」
玲って呼ばれた子。
今隣に立っている椎田と違って頭脳派のようだ。
頭を使って動くことができる人間は必ず強くなれる。
あたしはそう思っている。
現にマークも、仁も、力の強さだけではなく心の強さも兼ね備えている。
きっと彼もとても強くなるだろう。
敵にいるととても厄介なタイプだ。
「動くんじゃねえぞ」
「言われなくても動かないわよ」
椎田が睨みを効かせてもこんなのどうってことない。
椎田もあの子も、あたしの身分は知らないようだし。
寧ろ好都合だ。
あたしの顔は思ったよりも世間に知られていない。
「お待たせしました」
男の子が走ってくる。
「組長室までご案内します」
さっきと変わらない緊張感のない笑みをうかべてそう言った。
「会ってくれるのね」
「はい。とても大切なお客様と聞きました。アポさえ取ってくれれば、こんな真似をしなくてもよかったのに」
眉根を寄せて、笑った彼はどことなくまだ警戒している。
それはそうだろう。
得体の知れない人間を家に入れるなど、とても無用心だ。
「ごめんなさいね、急用だったから」
「以降お見えになる際は必ず事前に声かけて頂きたいです。今回のように失礼なことをしたくはないので」
「気をつけるわ」
ありがとうございます、と彼はとてもきれいな笑顔で言った。
綺麗すぎて寧ろ怖い。
「こちらが組長室になっています」
いくつかの角を曲がった、とても奥まったところに、それはあった。
この先、正直どうなるか分からない。
目の前を歩く彼も武術には長けているだろう。
護身術くらいなら出来るけれども、あくまでも護身術。
自分の身を守るくらいだ。
喧嘩は出来ない。
敵の出方によっては、口以外で勝負することになりそうだ。



