「無理だ……無理だって!何回も思ったよ!いけないって。あたしは自分を守るために、あそこを捨てたのに!」
ぐるりとまわる、まるで目眩のよう。
襲う…罪悪感、痛み、悲しみ。
きっとそれはあたしが想像しきれないほど、辛い現実だ。
「…やるしかなかったの。やらないなんて、言えないの。頭のいうことは絶対だから」
「…!」
力強い眼力から、彼女の意思の強さが垣間見えた時。
あ。
あたしが千夏ちゃんのことが怖かった理由は、わかったような気がした。
恐らくそれは。
目標のある目。
それが、何も持っていないあたしには、すごく恐ろしかった。
「でも、しょーじきなこと言えば、和佳菜ちゃんに申し訳ないなんて思ってなかったよ。だってあそこは千夏の居場所だから。千夏以外は獅獣のお姫様にはなれないんだから!」
叫びは痛みしかあたしに教えてくれない。
「情報を集めて、和佳菜ちゃんがどんな人なのか、何をしているのか、集めて、作戦を立てていたの。貴女から仁を奪えるって。かけがえない幸せなあそこであたしは暮らすんだって。…千夏は、そうすることでしか生きられないから」
そうすることでしか生きられない。
本当、昔のあたしとよく似てる。
あたしもマークの側に居たくて、居られるならなんだってしたなあ。
「和佳菜ちゃんの前で使うつもりだった作戦は、和佳菜ちゃんがいなくなったから使わなくなったけど、かえってあたしにはそれが良かったよ」
ふふと、小さく彼女はわらった。
それはそれは寂しそうに。



