マークのそばにいた頃、似たような雰囲気を合わせ持つ男が彼の部下にいた。
話を聞けば、彼は幼少期に親に捨てられ、居場所が無かった。
無いなら、作るしかない。
彼はそうやってしか、やっていけなかった。
結果、多くの人脈をもつ彼は、とてもマークに頼りにされていたと思う。
彼女の姿は、彼が疲れ切った憔悴した顔とよく似ていた。
だから、きっと彼のことを思い出したのだろう。
「…なんでよ。そんなの、誰も分からないらずなのに」
「分かるわよ。すごく頑張ってきたのは、ちゃんと伝わっているわ」
そっと肩を撫でると、彼女は俯いた。
「誰も分かってくれない。誰も、だあれも」
「でもあたしはちゃんと分かった。でも、あたしは貴女の努力が見えたよ」
はらり、と涙が落ちたのは、きっと気のせいなんかではないだろう。
「ねえ、人生なんて、どこからでもやり直せるわ」
彼女を抱き寄せながら、ひとりごとのように呟いた。
「あたしだって、そんなの、頑張ろうとした。でも…」
「変われないって?」
コクリと頷く千夏ちゃんはとても小さかった。
「じゃあ、今あたしはどうして幸せにしていると思う?」
ふふっと、笑ってみせると、彼女は眉根を寄せた。
「貴女の言う通り、あたしはこの最近は幸せよ。こんな過去を持っていてもね、人は幸せになれるものよ」
綾の彼女のジュリアだって、マークのそばにいたけれども、それでも、幸せを掴んだ。
「諦めるのなんて早いわ。あたしたちまだ十代でしょう?確かに過去は変えることは出来ないけれど、いくらだって幸せになる道は残っているはずよ。未来への自分行動次第で、幾らでも変えることが出来る。
あたしはそう信じている」
「詭弁よ……」
「あたしは少なくとも、歩んできた道は間違いだけではないと思う。大変なこともあったけれども、あたしがここにいるのは、紛れもない過去の自分のお陰だから」
そう思えば、きっと空の上で見ている蓮たって、きっと。
『そうだよ、和佳菜。そう思っていて。自分を責めたりしないで』
ねえ、きっと、きっと。
貴方も、そう言ってくれるでしょう……?
そう思わないと、あたし。
どうしたらいいか、分からないのよ……。



