蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



マークのそばにいた頃、似たような雰囲気を合わせ持つ男が彼の部下にいた。


話を聞けば、彼は幼少期に親に捨てられ、居場所が無かった。


無いなら、作るしかない。


彼はそうやってしか、やっていけなかった。


結果、多くの人脈をもつ彼は、とてもマークに頼りにされていたと思う。


彼女の姿は、彼が疲れ切った憔悴した顔とよく似ていた。


だから、きっと彼のことを思い出したのだろう。


「…なんでよ。そんなの、誰も分からないらずなのに」


「分かるわよ。すごく頑張ってきたのは、ちゃんと伝わっているわ」


そっと肩を撫でると、彼女は俯いた。


「誰も分かってくれない。誰も、だあれも」


「でもあたしはちゃんと分かった。でも、あたしは貴女の努力が見えたよ」



はらり、と涙が落ちたのは、きっと気のせいなんかではないだろう。



「ねえ、人生なんて、どこからでもやり直せるわ」


彼女を抱き寄せながら、ひとりごとのように呟いた。


「あたしだって、そんなの、頑張ろうとした。でも…」


「変われないって?」


コクリと頷く千夏ちゃんはとても小さかった。


「じゃあ、今あたしはどうして幸せにしていると思う?」


ふふっと、笑ってみせると、彼女は眉根を寄せた。


「貴女の言う通り、あたしはこの最近は幸せよ。こんな過去を持っていてもね、人は幸せになれるものよ」


綾の彼女のジュリアだって、マークのそばにいたけれども、それでも、幸せを掴んだ。



「諦めるのなんて早いわ。あたしたちまだ十代でしょう?確かに過去は変えることは出来ないけれど、いくらだって幸せになる道は残っているはずよ。未来への自分行動次第で、幾らでも変えることが出来る。


あたしはそう信じている」



「詭弁よ……」


「あたしは少なくとも、歩んできた道は間違いだけではないと思う。大変なこともあったけれども、あたしがここにいるのは、紛れもない過去の自分のお陰だから」


そう思えば、きっと空の上で見ている蓮たって、きっと。



『そうだよ、和佳菜。そう思っていて。自分を責めたりしないで』



ねえ、きっと、きっと。


貴方も、そう言ってくれるでしょう……?



そう思わないと、あたし。




どうしたらいいか、分からないのよ……。