どれくらいそうしていたのだろうか。
やがて、そろそろ行くぞと言われて、あたしは再び上体を起こした。
「顔赤いけど」
ニヤリと仁が笑う。
これは確信犯だ。
「気のせいよ!」
赤くなったあたしの怒鳴る声が闇夜に響いたことは言うまでもない。
地面に着くと、もう大分前に到着していたのだろう、久しく見る黒塗りの高級車が止まっていた。
「すまない、遅くなった」
ドアを開けてくれたのは、こちらも会うのが久しぶりである菅谷さん。
「お久しぶりですね、和佳菜様。お待ちしておりました」
「遅くなってすみません。よろしくお願いします」
「いいえ、とんでもありません。お二人が相変わらずであるようで、嬉しく思います」
相変わらず、が何を示すのかあたしには分からなかった。
仲が良いのか、と聞かれたなら悪くはないのだろう。
だけど。
それでも過去は消えないのだ。
仁がしたことも、その想いも。
それに対してのあたしの想いも。
消えないまま残り続け、離さない。
何が正しいのか、なんてわからない。
分からないから、探しに来た。
その第一歩が、彼女、千夏ちゃんとの再会だと、あたしは思っている。
あたしは習得した曖昧な笑顔を菅谷さんに見せながら、用意された車に乗り込んだ。



