「和佳菜様、あやみ様。到着しました」
「行くわよ、和佳菜ちゃん」
ドアから降りると、あたしを引き上げるように、掴んだ手を持ち上げた。
「ありがとうございます」
「心配?顔が真っ青よ」
あやみさんがあたしの顔を覗き込む。
そう聞かれれば、そうではあるが。
「ええ、そうですね」
「平気よ。ここには若頭選任の良い医者が揃っているの。大抵のことは直ぐに治るわ」
あたしの中には違うことが渦巻いている。
「…それは頼もしいですね」
ふう、とため息をついたあやみさん。
「やっぱり、上の空ね」
「え?」
「貴方の心配ごとは仁が7割、マークが3割って感じかしら?」
「…もちろん、佐々木さんも心配してますよ」
「あらその感じじゃ、あたしが言ってることはおおよそ外れてないみたいね」
そう、目を伏せた。
「分かっています、これでも。佐々木さんに失礼だということは」
今は彼が一大事なのだから。
それでも頭の中のどこかに仁が、マークがいて、離れてなんかくれない。
ぎゅっと唇を噛んだ。
何をしているの、あたし。
過去に拘ってばかりだと今を見落としてしまう。
大切なものを見失ったことのあるあたしは、もう、見落とさない。
分かっているでしょう?
もう二度と間違えたくはない。
「すみません、もう大丈夫です。行きましょうか」
どうか無事でありますように。
そう願いながら、…そっと一歩を踏み出した。



