…こんなところでもマークの話を聞くなんて、思ってもみなかった。
「奥様がいたからこそ、組長の野蛮なところもなんとかなってたの、でも」
あやみさんは、小さくため息をついた。
「奥様があんなことになってからは…本当に酷くて……」
「あの、奥様は…仁のお母様は、一体……」
彼女ははっと我にかえると、こう言った。
「知ってる?マーク・スティーブンっていう、アメリカのマフィアの中で1番大きい組織の次期頭」
その一言で、あたしは悟った。
あやみさんは何も知らないんだ。
あたしがアメリカにいたこと。
あたしがマークと知り合いで。
なんなら前の彼氏だったことを。
試している、という選択肢もなくは無いけど。
多分そうではない。
この人の目は。
純粋にあたしに疑問をぶつけている。
…どうしよう。
選択肢は2つ。
一、マークが昔の恋人だとこれを機に話す。
そして、もう一つは。
「…噂程度には」
マーク・スティーブンのことを少しだけ、知っているということ。
あたしが裏の世界に関わっているのは、あやみさんは勘付いているだろうから、全く知らないというのは寧ろおかしい。
あやみさん、ごめんなさい。
仁の仲間だし、信用はしているんです。
ただ、あやみさんが表に出そうとしなくても、情報は表に出てしまうことがある。
この世界は哀しい世界だ。
裏をかくには、スパイなる者が必要であるのだ。
瑞樹が簡単に銀深会に潜入出来ている時点で、外敵からのデータの保護がなされていないことになる。
つまりは他にも瑞樹のようなスパイがいることを否定できないのだ。
「じゃあ、…マークが約束に厳しいことはしってる?」



