「お待たせしました」
そう言って再びBARに戻ると、そこには仁の姿はなく、代わりに。
「久しぶりね」
「あやみさん…」
一度銀深会にお邪魔した際にお話ししたことのあるあやみさんがいた。
「…あの、仁は」
一輝もいない。
あやみさんにそう問いながら、なんとなく想像は出来た。
「待ってるって言って聞かなかったんだけど、組長サマに呼び出されちゃって、一輝と一緒に渋々出て行ったわ。一輝の一件に肩をつけるつもりだと思う」
そう眉根を寄せて、笑った。
「仁じゃなくてごめんね」
「いいえ、そんなことはないです」
大丈夫です、とは言ったものの、寂しくないと聞かれたのなら嘘になる。
「行きましょか、佐々木さんのとこに」
そう言った彼女に微妙な気持ちのまま頷いた。
表にはいつか見た車黒塗りの高級車が止まっていた。
「早かったですね」
運転席には、若い男の人が座っている。
見たことのない顔。
「あともう少し待ってれば、この子に会えたのに。組長ったら、急かすんだから」
「あの方はそう言う人でしょう」
内容が大体分かるから、頷いて聞いていたところ。
「俺ら、初対面ですよね」
バックミラー越しに目が合った。
「ええ」
「初めまして、河合智也|《かわい ともや》です」
「水島 和佳菜です」
「知ってますよ。あんな堂々と本部に乗り込んでいった人、初めて見ましたから」
ああ、あれを見られていたのか。
確かに、普通は女1人であんな暗くて怖い世界に入ろうとは思わないだろうね。
あたしの場合はやらざるおえない状況だっただけだけれども。



