「着替えて来い。佐々木さんのとこ行くんだろ」
はっと我に返った。
そうだ、大丈夫かな?佐々木さん。
こんなにゆっくりしている場合はないのに。
仁に会えて、浮かれていた。
「急げよ」
「分かっているわよ」
そう言いながら、一旦二階へ戻る。
パタン、とドアを閉めた時にはもう、足はいうことを聞かなくなっていた。
静かにお尻をついて、ドアを背に座り込んでしまった。
「…あたし、本当に何しているのだろう」
こんなに許せないのに。
まだ、貴方を心の中で憎んでいるのに。
罪滅ぼしなんて、そんなものにはならないのに。
どうしてこんなに嬉しいのだろう。
どうしてこんなに心が明るくなるのだろう。
本当は、もう答えが出ているのだ。
それでも、どこかで認めたくはなくて。
まだ許せないあたしでいたくて。
ざわざわと、まだ心が揺れる。
佐々木さんのことで安心なんかしていない。
まだ不安。
それでも、足は思うようには動かない。
ずっと気を張っていたせいだろうか。
行かなければと、思うのに。
仁のことで頭の中が支配されている。
がんばれ。
がんばれ、あたし。
気を張って。
強い女に、戻るのよ。



