「貴女ならそう言うと思っていました。組長がお呼びです」
恭しく頭を下げる、目の前の男。
「どんな用事かしら?」
「それは来れば分かる事です」
「あら、ここでは言えないことなのね。それか、貴方が知らないか」
「さあ?どうでしょうね?」
彼はあたしの軽い挑発では動かないようで、くすりと見下したように笑っただけだった。
「…きて、貰えますね?」
ニヤリとしたきみの悪い笑顔は少しも変わらない。
「…いいわよ」
「和佳菜様!」
「あたしも組長様に色々とお話したいことがあるから」
佐々木さんの悲鳴は確かに聞こえた。
だけど、じゃあ次を撃たれたらどうなるかなんて、目に見えている。
どんな毒かも分からないし、一輝は言っていない。
即効性があったのならば、毒矢一本でも命を落とす可能性は否定できないでしょう?
あたしの居場所を作ってくれたこの人には、絶対に生きていて欲しい。
その気持ちが分からない人なんているのかしら。
「じゃあ行きましょうか」
車を出そうと、彼は表にいた人間に声をかけて立ち上がる。
どうすればいい?
流石にこのままでは、つれさられてしまう。
だけど、ここで連れ去られてしまっては、ママや琢磨や瑞樹に必要以上に迷惑をかけてしまう。
それでも、佐々木さんは助けたい。
「和佳菜様?」
この男、只者じゃない。
だってここでもわらっていられるのだから。
どんなにあたしが思い詰めた顔をしても。
どんなに佐々木さんが顔を歪ませていても。
敵であるなら構うことなどしない。
あたしはこんな相手に、なにをしたのなら勝てる?
あたしは…。
「…内戦に人様を巻き込むのは頂けねえなあ」



