蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「貴女ならそう言うと思っていました。組長がお呼びです」


恭しく頭を下げる、目の前の男。


「どんな用事かしら?」


「それは来れば分かる事です」


「あら、ここでは言えないことなのね。それか、貴方が知らないか」


「さあ?どうでしょうね?」


彼はあたしの軽い挑発では動かないようで、くすりと見下したように笑っただけだった。


「…きて、貰えますね?」


ニヤリとしたきみの悪い笑顔は少しも変わらない。


「…いいわよ」


「和佳菜様!」


「あたしも組長様に色々とお話したいことがあるから」


佐々木さんの悲鳴は確かに聞こえた。


だけど、じゃあ次を撃たれたらどうなるかなんて、目に見えている。


どんな毒かも分からないし、一輝は言っていない。


即効性があったのならば、毒矢一本でも命を落とす可能性は否定できないでしょう?


あたしの居場所を作ってくれたこの人には、絶対に生きていて欲しい。


その気持ちが分からない人なんているのかしら。


「じゃあ行きましょうか」


車を出そうと、彼は表にいた人間に声をかけて立ち上がる。


どうすればいい?


流石にこのままでは、つれさられてしまう。


だけど、ここで連れ去られてしまっては、ママや琢磨や瑞樹に必要以上に迷惑をかけてしまう。



それでも、佐々木さんは助けたい。



「和佳菜様?」


この男、只者じゃない。


だってここでもわらっていられるのだから。


どんなにあたしが思い詰めた顔をしても。


どんなに佐々木さんが顔を歪ませていても。


敵であるなら構うことなどしない。



あたしはこんな相手に、なにをしたのなら勝てる?



あたしは…。




「…内戦に人様を巻き込むのは頂けねえなあ」