一瞬にしてあたりが静かになる。
口角は確かに上がっていたはずなのに、その声はあたしが聴いた“声”の中で一番低く。
ここにいる人全てを、口をきけなくさせてしまう。
“ 聞くな ”と言わんばかりの蔑んだ目。
言い合っていた男も当然口を閉じてしまった。
…変わったね、随分と。
今の貴方はあたしが知っている弱くて脆い貴方じゃない。
今の貴方は強くて…さらに格好よくなった。
「お前が口を挟んで何が変わる?」
「いや、ええと、ですね」
「俺の私情に口を挟むほどお前は立派なのか?」
「………いや」
「知っていることをどうしてこうも、咎められなければならない?」
「……その」
「お前は何の権利があってそうしているのか?」
「…も、申し訳ありません」
「この女が、マークの女であったことは間違えねえだろうな。だけど、その時ただのマークの女であっただけのこいつが、何を知ってると思う?」
そうよ、あたしは何も知らなかった。
知らされてなど、いなかったのよ。
「……マークの女なら、色々と…知っているかと…」
「なんだよ。その色々を具体的に言ってみろよ。何も知らないお前が、言えることなど多いと思えないがな」
誰も、何も言えなくなっていた。
あたしも下を向いて、ずっと何も言えなかった。
ただ、ただただ。
泣きそうなどうしようもない感情に揺さぶられて、何も言えなかった。
貴方だけがわかってくれた。
あたしが何も知らないって信じてくれた。
あたしと話した人たちは何もあたしの言葉など信じてくれなかったのに。
貴方だけだ、まだ何も言わぬあたしを優しく庇ってくれた人は。



