最初にあたしを罵った男があたしを睨むように次の言葉を言った。
「若頭、この女はマーク・スティーブンの元恋人ですよ。データはともかく、別室て話を聞いた方がいいのでは?」
「その必要はない」
「何故ですか」
すぐさま鋭い声が飛ぶ。
「お前は2年ほど前のニュースを覚えているか?」
「そんなもの分かりませんよ」
2年ほど前…。
ねえ、まさか。
「本当か?俺らの界隈では随分と話題になったはずだぞ。アメリカ一大きなホテルでの火災」
それは、あたしが決して無かったことには出来ない過去。
「…ああ、あの、マーク・スティーブンが関わっているって噂の。何人か逮捕者や死者が出ましたね」
それをどうして。
「それがみんな、マークと親交のあった奴らだ。その中にこいつも含まれてる」
貴方が知っているの…?
『和佳菜。ここは危険だ』
珍しく、あたしを守る人間が日本語で喋ったの。
いつもはマークが不自由ない英語を使うのに。
『お前だけは捕まらずに逃げろ。この国から出ろ』
貴方の望みは半分は叶ったけれども半分は叶わなかったね。
ごめん、ごめんなさい、蓮|《れん》。
もっと貴方と一緒にいたかった。
「仁さん、まさか…この女」
ねえ、ねえ。
その先を口にしないで。
お願い…。
「あの事件の…」
「そんなことはどうでもいい」
それはそれは低い声で放った。



