「だいたいこうやって送ってくる男は1人しかおらんのだ」
引ったくるようにあたしの手の中にあるものを奪おうとする。
「やめてください」
「お前はこれを私に渡すために来たんだろう!」
「そうです。渡すためです。でもあたしは奪えなんて言ってない」
叫んだあたしに驚いたのか。
「この小娘!馬鹿にしよって!」
捕らえろ、とでも言うように組長が声を荒げた。
瞬間的に走り出した。
巨漢数名が少し遅れてあたしを追う。
やめてよ、気持ちの悪い男たち。
あたしに触ろうとしないで。
あたしに触っていいのは……______。
「やめてください」
空気が急に冷たくなった。
誰もが喋ることをやめ、大人しくなる。
あたしを追っていた男たちも追うことをやめ、“彼”の次の句を待った。
「組長、たかが1人の女にこんなに惑わされてどうするんですか。皆さんも」
それを聞いて彼らは恥ずかしそうに目を伏せる。
「この女は日本に来てまだ日が浅い。どうせ見知らぬ大人に頼まれてここまで来たんでしょう。だから下の名を告げられていない」
よくもまあペラペラと嘘が吐ける。
あたしが日本に来てからかなり時間が経っていることは貴方がよく知っているだろうに。
だから、あたしには不思議で仕方がないの。
どうして、貴方はあたしを守ろうとするの?



