蒼の花と荒れる野獣Ⅱ


「俺、昔アメリカにいたことがあるって言った気がしたんですけど」


「そうだったな」


「俺の住む街では大富豪の彼女とかでかなり有名でした」


だから知っているんです。


と自信有り気に、…瑞樹が。


何故雅と名乗っているのか。


かつて敵と呼んだこの集団にどうしているのか。


なにもわからないあの、瑞樹が。


堂々とあたしを嫌うその人の隣に鎮座している。



モトカノ…?


聴いたことがあるのだけど、よくわからないのよね。


確か…略称であったとは思うのだけども。


昔覚えたはずの言葉も忘れてしまう。


僅かな衰えに嫌な気分にならざる得ない。



「君がマークの前の彼女……」


呟いた組長の言葉でようやく意味を感じとった。



…ちょっと待って。









スーパーで南と出会ったことを知った佐々木さんは、あたしに南と話さないように言った。


『…彼は、坊っちゃん、私……そして』


言葉をきった佐々木さんは、まっすぐ前を向いていた。



『…マーク様の、敵であるからです』



佐々木さんは言ったのだ、南はマークの敵だと。


だけど南はもうBreakという族を抜けて、今は銀深会側に付いている。



つまりマークと銀深会は敵どうし。


とてもまずい状態じゃない。


なんで言ったのよ、馬鹿野郎。


「それは誠か?」


じっとあたしの瞳を見つめる組長。


…分かっていますよ、組長。


言われなくても嘘はつきません。


「はい」


「何故黙っていた?」


「言うまでもなくご存知かと思ったのです。あたしがマークに攫われた時のニュースは、一年前とはいえ、大勢の方の記憶に残る程大々的に報道されたと聞いていたので」