「俺、昔アメリカにいたことがあるって言った気がしたんですけど」
「そうだったな」
「俺の住む街では大富豪の彼女とかでかなり有名でした」
だから知っているんです。
と自信有り気に、…瑞樹が。
何故雅と名乗っているのか。
かつて敵と呼んだこの集団にどうしているのか。
なにもわからないあの、瑞樹が。
堂々とあたしを嫌うその人の隣に鎮座している。
モトカノ…?
聴いたことがあるのだけど、よくわからないのよね。
確か…略称であったとは思うのだけども。
昔覚えたはずの言葉も忘れてしまう。
僅かな衰えに嫌な気分にならざる得ない。
「君がマークの前の彼女……」
呟いた組長の言葉でようやく意味を感じとった。
…ちょっと待って。
スーパーで南と出会ったことを知った佐々木さんは、あたしに南と話さないように言った。
『…彼は、坊っちゃん、私……そして』
言葉をきった佐々木さんは、まっすぐ前を向いていた。
『…マーク様の、敵であるからです』
佐々木さんは言ったのだ、南はマークの敵だと。
だけど南はもうBreakという族を抜けて、今は銀深会側に付いている。
つまりマークと銀深会は敵どうし。
とてもまずい状態じゃない。
なんで言ったのよ、馬鹿野郎。
「それは誠か?」
じっとあたしの瞳を見つめる組長。
…分かっていますよ、組長。
言われなくても嘘はつきません。
「はい」
「何故黙っていた?」
「言うまでもなくご存知かと思ったのです。あたしがマークに攫われた時のニュースは、一年前とはいえ、大勢の方の記憶に残る程大々的に報道されたと聞いていたので」



