蒼の花と荒れる野獣Ⅱ


大きな声では無かった。


響く声ではあったけれども。


それなのに。


皆の衆を震撼させ、一瞬にして黙らせる、この圧。



強い人がいる。


多分、あたしが視線を向ける奥に……。



人がぞろぞろを動く音がした。


あたしの目の前にいた人はみんな居なくなって、思った通りに。



紺色のスーツに身を包んだ男が、姿を現した。


「騒がしいと思って出てみたら……」


あたしをその目で捉えると。


とても驚いたように瞳をはためかせた。



「君は確か…仁のお気に入りの……」


この人、まさか。



「多分、人違いです。初めまして、…組長でよろしかったでしょうか?」



彼は少し黙ってから頷くと。


「いかにも。うちのものがうるさくて済まないね」


ああ、この人が。




あたしにとても辛い思いをさせた張本人。



多分、きっと。



許せないだろうな。



「いいえ。警戒されることは慣れているので気にしていません」


「…随分と堂々とした方だ。うちのものが騒ぐのも頷ける」


そう独り言を呟くと、にこりと微笑んだ。



「こんなところではなんだからね。うちに入りましょうか」



さあ、とでも言うように、手招きをしてあたしを呼んだ。