大きな声では無かった。
響く声ではあったけれども。
それなのに。
皆の衆を震撼させ、一瞬にして黙らせる、この圧。
強い人がいる。
多分、あたしが視線を向ける奥に……。
人がぞろぞろを動く音がした。
あたしの目の前にいた人はみんな居なくなって、思った通りに。
紺色のスーツに身を包んだ男が、姿を現した。
「騒がしいと思って出てみたら……」
あたしをその目で捉えると。
とても驚いたように瞳をはためかせた。
「君は確か…仁のお気に入りの……」
この人、まさか。
「多分、人違いです。初めまして、…組長でよろしかったでしょうか?」
彼は少し黙ってから頷くと。
「いかにも。うちのものがうるさくて済まないね」
ああ、この人が。
あたしにとても辛い思いをさせた張本人。
多分、きっと。
許せないだろうな。
「いいえ。警戒されることは慣れているので気にしていません」
「…随分と堂々とした方だ。うちのものが騒ぐのも頷ける」
そう独り言を呟くと、にこりと微笑んだ。
「こんなところではなんだからね。うちに入りましょうか」
さあ、とでも言うように、手招きをしてあたしを呼んだ。



