久しぶりに聞いた。
あたしが愛した人の名を。
だけどそれは確かに過去の話である。
「ああ、貴女が…」
マスターと呼ばれるその男性はまじまじとあたしを見つめ。
「Can you speak English ?」
急にあたしに質問を投げかけた。
それも英語で。
とても速かったので、普通の人なら聞き取れていないだろうがあたしはアメリカには13年住んでいた。
そこら辺にいる日本人とは違う。
「はい、もちろん」
英語で答えるのはなんだか癪だったので、綺麗な日本語で返した。
彼は目を見開くとそれからふっと優しい表情になった。
「…さすが、マーク様が愛する人でございます。僕の英語、ネイティブにしか聞き取れないって言われるのに」
「速いは慣れてます。マークが速かったので」
「左様でございましたね。嗚呼、急に失礼致しました。BAR Margaretの店主であります、佐々木と申します」
と、とても丁寧に挨拶をされ、頭を深く下げた店主さんを見て、驚かない人はいないだろう。
「あ、頭をあげてください。佐々木さんですね、よろしくお願いします。水島 和佳菜です。初めまして」
語順がおかしかった気がしないでもないが、気にしないようにして笑った。
「存じております。マーク様が随分と日本で大きな行動をなさったのは、後にも先にも水島様の件一回しかございませんから」



