「握手会に毎回?
でも、隆君の姿見たことないけど」

「変装してるって言っただろ?
ちなみに、毎回お前とも話してるよ」

嘘だぁ。と思いながら隆矢に視線を移すと、隆矢は片手で口元を隠して横を向き真っ赤になっていた。

「え、嘘、本当に?
教えてくれたら良かったのに」

「いや、それは無理……」

今更恥ずかしくて正体晒せない。と言うので、えー。と不満気に眉を潜めていたら陽人がコーヒーカップをテーブルに置いた。

「じゃあ、俺から勇菜に隆矢と付き合うための条件。
“変装してる隆矢を見つける”こと」

「何その条件って……」

「だって隆矢は勇菜と付き合うために事務所から何か条件付けられたらしいじゃん。
勇菜だけ何もないのは不公平だよな?」

「う……わかった。
絶対変装した隆君見つける!」

立ち上がって両手に拳を作り宣言すると陽人と陽菜は、頑張れー。と拍手した。
いや、ほんと勘弁してほしいんだけど……。と隆矢が呟くけれどその声は誰も聞いていなかった。

「……条件……」

ソファーに座ってからずっと沈黙を保っていた勇人が口を開いたので、隆矢の解けていた緊張がぶり返したように硬直した。
すっと視線だけを隆矢に寄越した勇人は、事務所からの条件は?と尋ねた。