助手席のドリンクホルダーにはあたたかいココア。

「それ、桃のだから。」
最近職場以外では名前で呼ばれることが増えた。まだいちいちどきどきする。
「ありがとう。」
敬語じゃない会話にも桃は少しずつ慣れてきた。

「なんか…ペアルックみたいだな。」
司に言われて桃は何日も前から着ていく服を悩んだかいがあったと思った。
黒のパンツにブラウス、パンプス。ちゃんとしたデートははじめてで悩んだ末に動きやすい格好にした。

「実はさっきまでどこに行こうか決めてなかったんだ。でも、桃のその格好を見て決めた。」
「どこ?」
「水族館。ベタすぎる?」
「うんん!行きたい。」