「すごいね小山さん。クッキー生地とお話し出来るんだ」
「いや、違っ、これはっ」
穴があったら入りたいとはまさにこのことだ。
恥ずかしすぎて、顔があげられない。
久しぶりのお菓子作りが楽しくてつい暴走してしまった。
「なんて。からかいすぎたね。ごめん。顔上げて」
「……っ、」
あんなに、まるで私を避けてるみたいに話をしなくなっていたのに、こうやって今日は優しく囁くように話しかけてくるんだもん。
まさかこんな風にナチュラルに話しかけてくれるとは思わなかったし、心の準備なんて全然してなくて。
「小山さん」
「……はっ、いっ、」
希夜くんの手が、私の肩にそっと触れたので条件反射のように顔が上がる。
「これ、俺のため?」
あの声が聞かれていたってことはそのあと発したことだってもちろん聞かれてるよね。
『希夜くん、食べてくれるかな』
それを知ってて聞いてくるんだもん。
ずるいよ。



