ガチャ

「た、ただいま〜」

玄関のドアを開けていう第一声にはまだ少し慣れない。
自分のお家じゃないのに、ただいまなんてくすぐったくて。

いつもなら「おかえりなさい」という恵美さんの声がキッチンかリビングから聞こえるけど、今日は留守みたいだ。

買い物、行ってるのかな。

でも、鍵は開いていたし。

「あ、おかえり」

「……っ!」

靴を脱いで玄関を上がり、ダイニングで恵美さんを探すようにキョロキョロしていたら、

洗面所から突然あらわれた希夜くんの登場にびっくりする。

「わ、た、ただいま、です」

「ん、なんで敬語」

希夜くんはそう言って可笑しそうに「ふっ」と笑って。

その表情に、胸がキュッと締め付けられる感覚に襲われたけど、それを紛らわすかのように、急いでテストの報告をしようとスクールバッグのチャックを開ける。

「あっ、あのね、希夜くん!」

そう言って、今日もらったばかりの折りたたんだテスト用紙を取り出して、バッと目の前の彼に点数がよく見えるように開いた。