「特に好きってわけではないけど、セロリもゴーヤも食べられるよ」
「へ〜すごいね」
「……っ、いや、すごいとか、そんな」
学校であれだけ目立っていて、凛としている彼に、まさか、苦手な食べ物がないだけで『すごい』って言われるなんて。
変な感じだ。
「すごいって。っていうか、名前」
「えっ」
トマトをカゴに入れた須永くんに指摘されてしまった。気づかれたか……。
男の子のことを下の名前で呼ぶなんてしたことなくて、うまく声に出すことができない。
「家に着く頃までには慣れるようにしようよ」
須永くんは「ね?」と私の顔を覗くようにする。
「……っ、」
なんで……。
嫌いだって突き放した私に、こんなに優しく接してくれるんだろうか。



