「ちょっと、希夜くん、ご飯、まだ……」
食べかけのお弁当を落とさないように必死に支えながらそう訴えるけど、希夜くんは「フッ」と笑っただけで全然止めてくれる気配がない。
「花純が可愛いのが悪いから。お弁当は一旦お預け」
希夜くんはそう言って私のお弁当に蓋をして、二段上の階段に置くと、グッと顔を近寄せてすぐに私の唇にキスをして。
チュッとなった音が非常階段にやけに響いて、ドキドキがさらに加速する。
希夜くんとの同居生活は終わってしまったけれど、多分、同居していた時以上に、触れ合っている。
恋人という関係になって、彼を独り占めできることが、私だってうんと嬉しくて。
希夜くんの執事姿、他の女の子たちも見るのかと思うと、私もちょっと複雑だ。
希夜くんはみんなにあんな風に言ってくれたけど、きっと、他の女の子たちは私が希夜くんの彼女であること全然納得できていないと思うし。
それでも今は、私だって離したくないって気持ちがどんどん溢れているから。
キスしながら、それに答えるように、希夜くんの手をギュッと握った。



