小さな少しかすれた声。

それさえすごく愛おしくて。

「……かす、み」

目をそらしながらそう呼ぶ希夜くんの顔が、真っ赤で。

今まで見たことない彼に、私の心臓もうるさくなる。

「……希夜くん?」

「あーだめなやつだこれ」

すぐに顔を手で覆って見せないようにする希夜くん。

どうしよう……可愛いすぎるよ。

いつもはどうしたって希夜くんのほうが何枚も上手(うわて)で、勝てっこないなって思っていたから。

こんな希夜くんが見られて、すごく嬉しい。

「希夜くん、照れてるの?」

「……言わないで」

「希夜くん、私に呼ばせる時は『名前呼ぶだけだよ』って言ってたのに」

「……そうだけど、違うじゃん」

希夜くんの顔は火照ったままで、目の前にいる人がこうだと不思議と自分の顔は熱くならないものだ。

「違うって、なにも違うことは……」

「全然違うよ。あの時、小山さん俺のこと好きじゃなかったでしょ。単純に苦手だっただけ。今の俺とはわけが違うって」