「え、須永希夜こっちに来るんですけど」
舞子が視線を希夜くんから晒さないまま小さく呟く。
「そうだね……」
たくさんの人に注目されてるにも関わらず、希夜くんはそんなのお構いしで私たちの席へと向かってきて。
「小山さん、ちょっといい?」
私の目の前に立つ彼は優しくそう聞いてきた。
「あ、う、うん」
みんなの視線が少し痛くて、ちょっと下を向いて返事をする。
「え、あのふたりってどういう関係?」
「前にふたりが映画館にいるの見たって噂があったけど、あれ見間違いじゃなかったのかな?」
「それ私も聞いた。絶対嘘だと思ってたのに」
教室にいるみんなが、私と希夜くんの関係に騒ぎ出す。
『絶対嘘だと思ってた』
はちょっと傷つくけれど。
教室の後ろのドアに向かう希夜くんの背後について歩く。
一体、どうしたんだろう。
とにかく、早くこの教室の空気から抜け出したい。



