「わたしだっておかしくなってる。希夜くんに触られると、フワフワして。なにも考えられなくなっちゃう自分が怖くなっちゃうぐらい」
「小山さん……」
希夜くんが優しく名前を呟いて私の頬を撫でて。
ほら、これだけでもうんと気持ち良くて、だんだんと瞼が重くなって。
瞬きがゆっくりになる。
「……希夜くん、」
徐々に遠のいていきそうな意識の中、手を伸ばして彼の頬に同じように触れる。
私から、こうやって希夜くんに触れるのは初めてで。すごく変な感じだけれど。
「あ、小山さん、もしかして……」
ボソッと聞こえた希夜くんの声。
落ち着く。
ずっとこのままがいい。
「……もう、離れないでね。だい、すき」
私はうつらうつらと、視界が霞んでいく中ゆっくりと希夜くんの頬から手を離して。
我慢の限界がきて、完全に目を瞑ってしまった。
「ちょ、今のタイミングでそれは確信犯すぎるでしょ。抑えきれなかったらどうするのほんと。……でもそりゃそうだね。ごめんねこんな時間まで付き合わせてしまって。ありがとう」
私が完全に眠りについてしまったとき、希夜くんがそんなことを呟いてたなんてつゆ知らず。
微かに優しいリップ音が響いた。



