「小山さん」

「……っ、」

聞いたことのない、希夜くんの低い声。
その声にもちゃんと優しさが感じられるから、余計胸が痛くなる。

「小山さんっ」

少し歩いて救護室のある棟を出ると、希夜くんが足を止めて、もう一度私を呼んだ。

「二見って、小山さんが前に話してくれた人?」

彼に顔を向けることができないまま、後ろ向きで頷く。

「っ、なんで、いるって教えてくれなかったの?小山さん、あいつのせいで辛い思いしてきたんだよね?」

「……ごめんなさい。言い出すタイミングがわからなくて」

「それでも……昨日だって、夜会えたじゃん。それに、あんなことがあったんだから、もっと警戒しなきゃ。なんで2人きりになんてなるの?保健係なんて他にもいるし……」

悲しそうな希夜くんの声。

希夜くんの善意を踏みにじるつもりなんてこれっぽっちもない。

だけど、希夜くんに甘えっぱなしじゃダメだと思ったのも事実だ。

私の問題だから、私と二見くんの問題だから、こうやって再会して話ができた以上、向き合わなきゃって。