「違う、違うよ。私は……臆病だから、堂々とあの子のことを助けることが出来なかった」
そうだ。
思い出して、鼻の奥がツンとした。
たとえ違うクラスだったとしても『いじめられている』って言う雰囲気はなんとなく伝わるもので。
学校の空気っていうのは恐ろしいものだって実感した。
関わったことがない子だったけれど、なんとかしてあげたいって思った。
苦しそうな人を見て助けたいって思うことに理由なんていらないと思う。
だけど、私はそれを行動に移すことはできなかった。
ただ、彼女が毎日水かけをしてる花壇の前で泣いているのを見かけたから、ハンカチを渡した。
あの時の私にできたのはたったそれだけだった。
結局、彼女は不登校になってそのまま転校してしまったし。
何もしてあげられなかったって、後悔したことの一つだ。



