「こんなところで会えると思わなかったよ。さっき名前聞こえた気がしてまさかと思ったけど」

「……っ、」

「あれ、もしかして、小山俺のこと忘れてる?」

何言ってるのよ。
忘れるわけがない。
忘れたくても忘れられないよ。

あの時触られた感触もその怖さだってまだちゃんと鮮明に覚えているんだから。

私は、あなたのせいで──────。

グイッ

「……ちょっ、」

突然、カゴを持つ手が引き寄せられたかと思うと、変わらない懐かしい匂いが鼻をかすめて

空気がフワッと動いて、耳に息がかかった。

「……俺はちゃんと覚えてるよ、なにもかも」

っ?!

「……やっ、やめてっ」

ふいにささやかれたその声に、ブワッと鳥肌が立って。

私は彼の身体を押しのけてその場から逃げるように、顔を隠しながら、グループのみんなが待つところへと走って戻った。