「……小山?」

っ?!

突然、後ろから聞こえた聞き覚えのある声に、足が止まった。

『ごめん、急に呼び出して』

『ずっと、気になっててさ、小山のこと』

昔の記憶が蘇って、心臓がバクバクとうるさい。

せっかく忘れられていたのに。

心のどこかではまだ、そんなこと有り得ない、あるわけない、と思いながらゆっくりと後ろを振り返る。

「やっぱり、小山じゃん」

そう言ってクイッと上がった口角。

ストレートマッシュヘアに少し長めの前髪から覗くアーモンドアイ。

私の人生を狂わせたと言っても過言ではない人物が、今、目の前にいる。

「久しぶり」

「……っ、」

再び声をかけてきた彼から、やっと一歩後ろに下がることができた。

それでも、うまく言葉が出てこない。

こんなところで、再会してしまうなんて。

「綺麗になったね」

私の気持ちなんかおかまいなしに、平然と話しかけてくる彼に、ゾッとする。

あんなことがあったのに、なんでこんな風に話しかけて来れるんだろうか。

そもそも、私のこと覚えてたんだ。

二見 椿(ふたみ つばき)くん。

私が男性不信のキッカケになった、張本人だ。