「……あっ、あの、」

「ねぇ、あれって明葉高校の須永希夜くんじゃない?」

勇気を出して女の子たちに話しかけようとしたら、そんな声が聞こえた。

パッと周りを見ると、みんなの視線が希夜くんに集まってるのがわかった。

そうだ……学校でイケメンと騒がれている希夜くんのことだから他校にだって噂されてることもあるだろうし、こうなるよね。

これじゃ、女の子たちもどころか希夜くんともまとまに話せないんじゃ……。

そう思っていたら、希夜くんに声をかける女の子がひとり、またひとりと増えていって。

本館に着く頃には、私と希夜くんの距離は随分離れていて。

希夜くんと『またね』も言えないまま、私はトボトボと女子棟へと向かった。