「神か……。正直、会いたくない……」

牛車に一緒に乗った葉月は、沙月の肩にちょこんと頭を乗せて甘える。葉月が甘えてくるなど珍しい。沙月はそっと葉月の手を握った。

「確かに、葉月はちょっと気まずいかもね。でも会っておかないと、ヤマタノオロチと戦う時に協力できないかもしれないじゃない。だからーーー」

言葉を続けようとする沙月を遮り、葉月が言った。

「明日、俺と出かけてくれ。約束をしてくれるなら、今日は我慢する」

「えっ……!?それって……」

沙月の頰が一瞬にして赤くなる。デートというものだ。葉月の顔も赤い。

二人は付き合っているが、友達にバレるとまずいので外でデートしたことは一度もない。沙月は初めてのデートに胸が高鳴った。

「明日、楽しみにしてる!」

そう言って、沙月は葉月の頰にキスをする。すると「違うだろ、バカ」と不満げな声が返ってきた。

「キスするならこっち、だろ?」

その刹那、沙月の唇に柔らかいものが触れる。それは、久々の葉月とのキスだった。