沙月は葉月を見つめる。葉月は、「何やってんだ、あいつら」と言いたげな顔をしていた。しかし、それは妖怪たちに対する怒りなどではない。いつもの葉月に沙月はホッとする。

「みんな!」

沙月が笑顔で曲がり角を曲がると、そこにはやはりお雪たちがいた。突然のことに妖怪たちは固まっている。

葉月がゆっくりと姿を見せると、お雪たちは気まずそうな顔をした。

「葉月、沙月、今回はすまなかった……。嫌われてしまってもおかしくはない……」

「本当に、ごめんなさい」

嵐猫とお雪が謝る。次々と他の妖怪たちも謝っていく。

「……私の方こそ、みんなから目を背けてしまってごめんなさい」

妖怪たちも考えていてくれたことを知り、沙月は申し訳ない気持ちになった。涙が頰を伝う。

「…………」

葉月は無表情で、妖怪たちを見下ろす。春太郎と幸子は今にも泣き出しそうだ。

沙月が慌てて口を開いた刹那、葉月の表情がとても柔らかくなった。普段は滅多に見せない笑顔を、妖怪たちに向けている。