「失礼します」

そう言って沙月が部屋に入ると、そこにはスーと葉月もいた。

「……は、づき?」

驚いて、沙月は固まる。葉月はゆっくり沙月に近付き、「会いたかった」と優しく沙月を抱きしめた。

その刹那、夢ではないとわかり沙月の目から洪水のように涙が流れていく。沙月の涙で葉月の着ている着物が濡れていくが、葉月は何も言わずに沙月を抱きしめ続けてくれている。

「葉月……!私も、会いたかった!」

沙月は泣きながらそう言い、葉月の背中に腕を回す。葉月も泣いているようで、温かい水滴が沙月の頭に伝わった。

「……おい、お前たち」

二人の世界に浸っていた沙月は、イザナギの冷たい声で我にかえる。慌てて葉月と沙月は離れ、イザナギを見つめた。

「お前たち二人にチャンスをやろう。千年前の罪がなくなるチャンスだ」

イザナギの言葉に、沙月と葉月は顔を見合わせる。お互いに驚いた顔をしていた。

「それは、一体何をすればいいのですか?」

沙月が訊ねると、イザナギはゆっくりと口を開く。

「ヤマタノオロチを封印するのだ」

それは、二人の運命をかけた最後の戦いだった。