サシャは人々の言葉に嬉しさを感じる。城にいると、立場の違いというものを嫌でも感じさせられるからだ。

サシャには、書物で読んで知った「友達」がいない。城にはサシャと同じ年頃の人はいないし、城にやって来ることもない。

サシャには多くの兄弟がいる。しかし、みんな忙しくてサシャは一人でいることがほとんどだ。その一人の時間でさえも、舞などの稽古に費やさなければならないのだが……。

だから、サシャは町に来られる時間が好きだ。身分というものを忘れられる。無断外出がバレて何度怒られても、やめることはできない。

サシャのような神は、時の流れが違う。その時の流れを感じることは、城に閉じこもっていては感じられない。外に出て、初めてわかるのだ。

サシャは、ツキヤと出会いーーー恋に落ちた。



サシャは、ツキヤが生きていた人間だと出会った瞬間からわかっていた。神や妖怪ならば、その人をまとう空気が違うからだ。

ツキヤが、助けれもらったお礼がしたいと言ったので、サシャは一週間後にツキヤと出会った神社で待つよう言った。