「彼女はサシャ。イザナギノミコト様とイザナミノミコト様の間に生まれた姫神様です。彼女は、あの世を見守るという仕事があります」

サシャは厳しく育てられ、幼い頃から舞や茶道などを教えられ、城の外へ出ることもほとんどない。というよりも出してもらえないのだ。

「……こんなのやってられるかよ!」

サシャはニヤリと笑うと、重い着物を脱ぎ捨て、軽い袴に着替える。そして腰に愛刀を差し、城の抜け道を通って外へと飛び出した。

サシャはこうしてたまに城を抜け出している。民の暮らしがわからないのに、政を行うわけにはいかないからだ。父であるイザナギは、それをわかっていない。大臣たちからの情報をもとに政治を行なっている。

ほとんど外へ出ないサシャの姿を、人々は誰も知らない。ただ服装から貴族の娘がいると思われるだけだ。

町は、あの世の都は、サシャを優しく受け入れてくれている。町を歩けば人々が声をかけてくれる。

「そこの美しいお嬢さん、このかんざしはどうかな?」

「今日は魚が安いよ〜!買って行ってね〜!」

「お嬢さん、よろしければこちらの着物をご覧になりませんか?」