「どうした？」

葉月が訊ねる。沙月は首を横に振った。しかし、視線や寒気は治ることはない。

「それで？どんな物語なの？」

笑顔を作り、沙月は訊ねる。聞いてはいけないような気がしたが、聞くしか道はないとなぜか沙月の心に命令が下る。

「あの世は、多くの神々によって作られていた。あの世は霊や妖怪が暮らし、幸せで満ちている。あの世ではみんなから注目を集めているある一人の神がいた。それはーーー」

「サシャ。この私、イザナギとイザナミの娘…」

突然、聞いたことのない声が響く。二人が振り向くと、いつからそこにいたのか威圧感のすごい男性が立っていた。豪奢な着物を着て、腕組みをしてこちらを睨みつけている。

その男性の傍らに、次々と妖怪たちが現れ始めた。そのどれもが苦しげな表情で、沙月は訳がわからなくなる。

「えっ？これって？」

動揺する沙月の前に葉月が立つ。スーが口を開いた。

「前世の記憶は、本当は持ってちゃいけないんだ。なぜなら、その人の新しい人生を作るのを邪魔してしまうからね…」