サイダーを飲み続ける沙月のおでこに、葉月がそっとハンカチを当てる。

「汗、とりあえず拭け」

渡されたハンカチは、葉月の匂いがした。

「は〜い」

沙月はその香りを胸に吸い込み、頑張ろうと思った。

蔵の中を探し始めて二時間ほど。夢につながるようなものは出てきていない。

その時、葉月が「沙月!」と沙月を呼んだ。

「これがそうだと思う!」

葉月は古い巻き物を取り出し、笑った。



暑い蔵から涼しい葉月の部屋に向かい、巻き物を広げる。その巻き物の中にはたくさんの絵が描かれている。絵巻物だ。

美しい女の人と男の人が描かれている。

「この巻き物と一緒にある紙を見つけたんだ」

葉月がそう言ってまた古い紙を取り出す。ひいおじいさんが書いたものらしい。

「曾祖父さんは、死んだ友達に会いに行ったらしい。その時にあの世で聞いた話を絵巻物にしたらしい」

その時、沙月の体に寒気が走った。強い視線を感じ、沙月は辺りを見渡す。一人だけでなく、何十人もの人に見られているような気がした。