都の剣〜千年越しの初恋〜

清水寺の地域一帯は、昔死体捨て場になっていたらしい。霊感の強い沙月や葉月には、音羽の滝や縁結びの地主神社など、どこに行っても霊の姿を見てしまう。

沙月は妖怪たちと暮らしているが、実は霊や妖怪といった類が苦手だ。だから多くの霊を見ると、沙月は気分が悪くなってしまう。

葉月はまだ少し青白い顔の沙月の肩をそっと抱く。人肌は心を落ち着かせる効果があるらしい。沙月はその心地よさに目を細める。

「……無理はするなよ」

葉月のそんな不器用な優しさが、沙月は好きだ。沙月が目を閉じて葉月の優しさに浸っていると、刹那、近くで人の悲鳴が聞こえてきた。

沙月と葉月が目の色を変えて振り向くと、大勢の悪霊が一般の人を襲っている。霊は多くの人には見えない。そのため、何が起こっているのかわからずパニック状態だ。

「…まずいな」

葉月がそう呟き、その場所へと走る。沙月も後に続いた。

「私、妖怪を召喚するね!」