「私と、出会ってくれてありがとう」

遠くから聞こえる誰かが傷つく声、炎や光線が飛び交う音、ヤマタノオロチが地面を這う音。全てが、ゆっくりに沙月は思えた。

「私、葉月を好きになれて本当によかった。こんな弱い私を支えてくれて、守ってくれて、本当にありがとう」

葉月の体が小刻みに震える。その目から、きれいな涙がこぼれ落ちた。それに沙月はそっと触れ、葉月の涙をぬぐう。

「葉月は私を忘れて幸せになって。私はいつでもあなたを想っているから……」

堪えていた涙が沙月からもこぼれ落ちる。それでも沙月は笑顔のまま、まっすぐに葉月を見つめた。

沙月がイザナギたちの方を振り向こうとすると、「……ふざけんなよ」と震えた声で葉月は言い、沙月の手を強く掴む。

「絶対勝つって約束しただろ!?俺らの未来はどうなんだよ!!方法なら絶対まだあるはずだ!だからーーー」

泣きながらそう言う葉月の口に、沙月は優しく唇を重ねる。何度も、何度も、沙月は葉月に優しいキスを繰り返した。