「遅くなってごめんね。
いろいろやってたら時間すぎるの早くて……」


わたしを抱きしめたまま離してくれない。


すると、依生くんの肩が一瞬ピクッと跳ねた。



「……甘ったるい匂い」


「え?」


一瞬とても低くて、冷たい声が耳に届いた。

ボソッと言ったのでいまいち聞き取れず、聞き返そうとしたけど。



「いったん着替えておいで。
早く帆乃のこと充電させてよ」


さっきの声のトーンは気のせいだったのかな……?


すぐに言われたとおり部屋に戻って部屋着に着替えた。



いつも着ている部屋着はグレーのマキシ丈のワンピース。

家にいるときはこれくらい緩いほうが楽でいいかなって。


さっきの依生くんの様子が引っかかるので、着替えを終えて急いでリビングに向かう。