最後の一瞬でもいい…君に会いたい

touch.6 その声で。



まるで時間が止まったような、この病室で。

あと…どれほどの時間どれほどの日
窓の外を眺めればいいの?

笑顔で走り回る子供達が可愛くて仕方なかった。

けれど、今の私には恐ろしいほど憎らしく目に映って
そんな自分に腹が立って悲しくなって涙が出た。

行き場のない…人を切りつける気持ちが止まらない。

分かってるよ!!充分…分かってる。

ただの八つ当たりだって。


でもサッカーが
全てだった私に、
もう歩けないかもしれないという
恐怖は計り知れないものだった。

私は最低で、羨むことしかできない。

コンコンッ

不意になったノック音に心臓が跳ねる。

「拓真さん、面会希望の方が来てるのだけれど。」
うかがうような看護師の声が聞こえてきた。



私に?誰?来る人なんていたっけ?

そういえば人に会うの何日ぶり?

誰が来たかなんて、まぁ今の私にはどうだって良かった。

「どうぞ…。」

正直人に会うとか嫌だったけど…
来てくれたんなら適当に流しておこう。

そう思いながらも開かれた扉に視線を
向ける動きすら億劫で私は変わらず外を
眺めてた。

「しずく、生きてたんだな。良かった。」

私の耳に飛び込んできた声は
予想外のもので。

あまりの動揺に首が上手く回らなくて
…振り返るのに
とても時間がかかった。

「……えっ」

目を見開く。

目にこんなにも大きく人を
捉えようとしたのはいつぶり?

だって…そこに居たのはその声は


先輩のものだったから。

「ど、どう……して?」

空調の効いた病室では
かわいた声しかでなくて困った。

「強いな。しずく。」

ニコッと私に笑いかけるその仕草に
また心がはねた。

「ねぇ、先輩……?」

ずっと知りたかった。

あなたのこと。

「ん?」

「先輩の…名前は?」

やっと口に出した言葉。

「薮下 鈴」

れい…なんて綺麗な名前なんだろう。

私は一目見た時からあなたが好きでした。

だから呼ばせて下さい。

この声で。




「れい先輩。」